一滴
日本に完全帰国して一ヶ月とちょっと。
やっと、少しだけ落ち着いてきたように思う。
知っている教会もない、仕事も何をしたいのかわからない。
親との会話はなんだかぎこちなく、空気は少しだけ固いように感じる。
それでも少しずつ、少しずつ、沼の中を歩くように進んでいる。
はじめた仕事は、正直自分でも想像だにしていなかった職種。
年老いた人々の生活をお手伝いしている。
まったく経験のない仕事だから、何をやるにも引け腰になってしまう。
自分のすることが、直接人のいのちにかかわるかもわからない。
色んな人に、「どうしてこの仕事しようと思ったの?」と聞かれる。
まだその問いに対するはっきりした答えが出ないままだ。
賃金が良かったから、というのは確実にひとつに含まれるけれど。
飲食店でも、携帯ショップでも、なんでも良かったと思う。
どこで働こうと、用いられ、祝福されると思う。
しかし、どこか、何か違う。
自分に何かが足りない、と錯覚している。
寄り添うこと。
愛を手渡しすること。
人を恐れ、人を避け、人に媚び諂う自分に、できないこと。
なにもできないかもしれない。
それでも、一滴だけでも、いのちの水を。